接客業はお客様から感謝されなければ意味が無い
宿泊業をしていて、
「この仕事をやってよかったな!」
と思う瞬間って、色々とあります。
現在復興工事中の最中である宮古市、当館は90~98%のお客様が復興工事関係者の皆様なのですが、一口に工事関係の業者さまでも色々な業種や、元請け~下請けさん等々の関係、職人さんの性格など、受け入れるお客様は多岐に渡ります。
これは、工事業者さんに限った事ではなく観光のお客様にも言える事ではあります。そのお客様が宿泊施設に対して何を求めているのかを長い滞在期間中に少しでも早く感じ取るスキルが求められます。工事のお客さまは、大概1週間以上という長いスパンで宿泊される訳ですから、その人に必要なサービスに気づいて提供してあげるのにも、ある程度の余裕があります。
1泊2日の観光のお客様ともなると、そうは行きません。
PM16:00チェックインから翌AM9:00までのチェックアウトまでの17時間が勝負です。なので観光のお客様の場合は絶対に失敗が許されません。と言いつつ、私結構失敗しております....。お客様には 「いいよ!そんなの気にしなくて...」なんて言われますが、この仕事でお金を頂いている以上、失敗の直後はかなり凹みます。
そして、観光のお客さまは殆どの方が気さくな方ばかりです。観光=遊びに来ている訳ですから、気持ちも高ぶっている方が多いのですが、一方の工事関係のお客様となると、仕事で来ているという緊張感のもとでの滞在。やはり観光の方とは旅館を使用する目的が変わる訳ですから、私共も使う神経がまた違ってきます。
できる事にはたかが知れているかも知れませんが、それが工事関係者の方を受け入れる宿泊施設としての醍醐味だと感じます。
下の写真は、先日の3連休に宿泊された観光のお客様のチェックアウト後の乱れ箱ですが、
このような書き置きをされては、逆に私どものほうがお客様に感謝しなければなりません。
盛岡から来ている大工さんのお話
工事業者さんには、職業柄なのか「ぶっきらぼう」な方が多いのです。
「おはようございます!」と声をかけても無反応だったり、「行ってらっしゃい!」と声をかけても素通りなど。玄関、部屋のスリッパを揃えないのは当たり前です。
上記に関しては、偏見かも知れませんが「工事業者さんだから」という先入観のもとに接客していると不思議とさほど気になりません。
食堂でご飯を食べ終わったあとに「ごちそうさまでした」と声をかけて下さる方と、そのまま無言で退出される方と2通りです。
そんな中、盛岡から来ている大工さんのお話。
主に大手ハウスメーカーさんの下請けをされている業者さんなのですが、年齢は50代と30代、そして10代の見習いさんの計3名の業者さん。職業は大工さんです。
50代の方は、年齢相応でしっかりしていらっしゃいます。ここで注目したいのが、30代の方。私よりも少しばかり年下の方ですが、すごいしっかりしているのです。多分、私は同じ土俵で戦ったら負けてしまうでしょう。
基本的に挨拶もしっかりされていて、お部屋の使い方もかなり綺麗です。
そんなある日、10代の見習い中の職人さんが食事終了後に何も言わずに食堂を後にしようとした瞬間...
「こら!、ちゃんとごちそうさまを言え!!」
とかなり大きい声で叱っていたそうなのです。
(若女将から聞いた話)
その子は普段は挨拶もしっかりしていて、若いのにしっかりしているなぁ~と関心していたところ、そのからくりはこんなところにあったのですね。
現場のトップに立つ方の日頃からのこのような躾が、若い職人さんをしっかり育てているのだと関心しました。この会社の社長さんにも、先日ちょっとした御縁があってお会いした事があるんですが、社長さまもお若いのにしっかりしていらっしゃる。きっと、この会社の社風がそうさせて居るのかも知れません。
お客さまから感謝されたかどうか...
食後の表情などを見ていると、満足そうに「ごちそうさま!」と言って頂けると、今日は満足してくれたな...と感じ取る事が出来ますが、残念ながらそうでない時もある訳です。
チェックアウト時に、「お世話になりました」と言って頂けると、「感謝されてるんだな」と感じ、しっかりサービスした事が報われる瞬間でも有ります。
結論から言うと、「お世話になりました」と全てのお客様から言って頂かないと、私どものサービス業はやらないほうがいい!!、そんな結論に達する訳です。
たとえ、それが工事業者さんであっても...。
履物は揃えなくても、部屋を多少汚く使われても、挨拶だけはしっかりして頂きたいのです。人間として当たり前の作法だと思うのです。
じゃないと、わたくしどものサービスに対して感謝されているのかどうかの指標が分からない。
普通に挨拶されるだけでも、もっとこうしてあげよう!とか、やってあげたい事が沢山出てきてしまうのも接客業の醍醐味と思うのですが、基本は全てのお客様に平等にという信念で営業していますので、基本以上のサービスをして差し上げたいと思うかどうかは、挨拶をしてくれるのか、しないのか、私のなかではそれだけしか無いのです。
やはり、「この仕事をやっててよかった!!」
と毎日思う事が出来なければなりません。
究極のサービス業として、私達としても、もっともっとやらなければならない事が山ほどあります。
全てのお客様から感謝されるようになるまで...。